広野童謡まつりへの参加
童謡祭、童謡コンクールといったイベントは、毎年各種開催されているが、そのほとんどが首都圏に集中しており、地方で開催されるものは数少ないというのが現状である。
「もっと地方が主体となり発信する童謡まつりがあってもいいのではないか」とのことから、童謡・唱歌との関わりが深い広野町でも平成六年から開催された。
「とんぼのめがね」は、昭和二十六年NHK東京放送「ラジオこどもの歌」の中で毎日歌われ、全国に広がった。
今日に至るまで、幼稚園や小学校の音楽で歌われている馴染みの深い歌である。
この歌を作詞されたのが、こどもの目を持ったお医者さん額賀 誠先生であった。
平井 耕三郎先生が作曲し、安西愛子さんが歌われた。
額賀先生は、いわき市四倉町に生まれ、昭和十二年無医村であった当時の廣野村に内科医院を開業され献身的な医療活動を取り組みされた。
医療のかたわら「赤い鳥」の同人として活動され、数多くの文化人との親交もあった方である。
「夕焼け小やけ」「ゆりかごのうた」「どこかで春が」など多くの名曲を生んだ作曲家草川信氏との親交も深く、二人による曲も数多く作られている。
「とんぼのめがね」は、昭和二十三年頃、十二キロメートルほど離れた山間部の箒平地区に往診に行った際、その家の子供がトンボとたわむれている情景を詩に歌ったものである。
地域医療を担う強い責任感と、地域の隅々まで目を配り、子供の視線、子供の目で物事を見つめる感性から生まれた。
一方「汽車」は、新潟県村上市生まれの大和田愛羅氏により作曲され明治・大正・昭和・平成へと愛唱されている。
「今は山中今は浜、今は鉄橋渡るぞと、思う間もなくトンネルのヤミをとおって広野原」
「汽車」の舞台とされている地は、新潟、静岡、九州などいくつかあるとされているが、
この作詞は、愛媛県宇和島生まれの国文学者大和田建樹氏が常磐線久ノ浜〜広野間の情景を詩にしたものと、広野町では昔から語り伝えられている。
こうした先人の詩に綴られた童謡は、広野童謡まつりとして誕生し、町主催、日本童謡協会の協賛のもとで町内有志の実行委員が運営にあたり、2001年10月で8回を数えた。
ピーアールは、テレビでの紹介や、いわき市いわき駅、川内村など広域に亘りのぼりを持ってのチラシと花の種を配布など余念がない。
当日の会場周辺には、「童謡のまちひろの」をアピールするのぼりが飾られ、音楽祭のムードが高まる。
会場入り口では、町の花「やまゆり」から新たな特産品として「水ようかん」をプレゼントし、「独特の歯ごたえがあっておいしい」などと好評を集めた。
全国に作詞コンクール・歌唱コンクールに応募を募り、作詞コンクールついては課題部門と自由部門の二部門おいて四百字詰め原稿用紙一枚以内綴られ、歌唱コンクールについては過去の作詞コンクールで優秀賞に選ばれた曲と広野ゆかりの「汽車」「とんぼのめがね」の中から選んで歌いカセットテープで寄せられた。
毎回2000点前後の作品が応募されている。
第一部は、町ゆかりの唱歌「汽車」でオープニングを告げ、全国からの応募があった課題部門と自由部門において作詞コンクールの入賞作品が紹介される。
それぞれの詩に、日本童謡協会の作詞家が曲をつけ、プロの童謡歌手が歌い披露する。
第二部では、童謡歌手と町内の幼稚園児や小学生、コーラスグループによるコンサートやテープ審査の合格者による歌唱コンクール、また国際高齢者にちなんでお年寄りが歌うコーナーが設けられた年もあった。
町内で菓子店を経営される新妻 秀浩さんの作詞「んだな!」が第二回作詞コンクールで優秀賞に選ばれた。
とてもテンポ良く、子供たちに馴染まれている。
すばらしいと思う。
「 朝焼けおそらを ゆびさして
あんちゃん トンボ! トンボだよ!
んだな! んだげ! んだよな!
夕焼けお山を ゆびさして
ばあちゃん トンボ! 赤トンボ!
んだな! んだげ! んだっぺなぁ! 」
全国各地やアフリカのケニア在住の日本人はじめ海外から詩の作品が寄せられている。
現在、広野幼稚園、小学校、中学校と教育の一環として応募するなど広がりを見せている。
先人が残してた童謡・唱歌の継承とともに新しい童謡を創出し、感性豊かな人づくり・町づくり、親子の心つなぐ童謡の町を目指している。
童謡・唱歌を歌い継ぎ、ふるさとづくりに生かす活動は全国各地で盛んだ。
鳥取県は、創作童謡を広めるため、全国にコーラス用の楽譜集を送り案内し、子供たちがまず、地元で覚え歌ってもらおう小学校の教科書の掲載した。
広野町も、平成七年町中心部の公園に、童謡の里のきっかけとなった子供たちに童謡を通し、明るく元気に育ってもらいたいと願い創作された「とんぼのめがね」の歌碑が、先人の志を末永く後世に残していくために建立された。
歌碑の文字は、「とんぼのめがね」の作曲者、平井耕三郎先生が書かれた。
また、全国の童謡都市が集う、「全国童謡・唱歌サミット」「第五回サミット&フェスティバル」等に参加し童謡文化の発信地づくりに取り組んでいる。
私たちは、自らの手で子孫へ向け地道な努力を重ね、インターネット紹介、童謡歌詞の印刷したのれんの製作、曲を流すシスデム等の課題に取り組み童謡まつりを盛り上げていかなければならないと思っている。
ふる里の自然、家族愛、友情、動植物などを題材した童謡は日本人の心の源風景である。
「とんぼのめがね」の作詞者は、戦後間もない心の荒れた時代に童謡を通して人間の心の豊かさと生きる力強さを詩に託した。
広野は、日本でスバル星が最もよく見える市町村として認められた町。
広野町は、冬の星空日本一である。
文部科学省の1992年冬の星空継続観察(スターウォッチング・ネツトワーク)の結果によるもので、空気がきれいで自然の残る美しい地域の「証」である。
観察は、7倍の双眼鏡を使い、おうし座のスバル(プレアデス星団)や周辺でどの明るさの星まで見えるかを競うもので、対象25個すべてが観察できた市町村となり、周辺に明るい光源がなく観察に適しているまちとして全国第二位となった。
自然の残る情景豊かなまちに、美しい自然と触れ合う心とが息づく童謡の文化を永遠に咲かせ続けたいと思う。